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ドアが閉まる音が大きく路地に響く。
それを追ってテールランプがゆっくりと遠ざかり、
その残像も瞳から消えると、大きな息を吐き出した。
おもむろに顔を上げて、曲がり角に目を向ける。
ここを曲がって少しした先が私の家
「何か、言いなさいよね…」
家はこの近くなの とか
家の前まで送ろうか とか
もしそう言ったなら、
そしたら――――
「…寄っていく? って、
言ってあげたかもしれないのに」
予定がある彼が寄る訳がないと
判り切っているけれど
少し霞んだ月を見上げて
もう一度大きなため息が漏れる。
―――今日は疲れた
腕に下げた傘を軽く地面に打つと、
立てた微かな音を聞きながら踵を返した。
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