渋い現実

11/32
前へ
/32ページ
次へ
それからいくつか他愛のない話をして、 頼んだ料理が綺麗に無くなった時、 「この間渡瀬くんと会った時にね、  うちと業務提携したらどうかと言ってみたんだ」 ぽつりと届いた声にゆっくりと顔が上がる。 「え?」 「会社同士じゃなくて、  ただ単に彼への提案だったけれど  …けど、これは内緒だよ」 軽く目を細める表情に、私は同じ表情で頷いた。 「ちょっと別の噂も耳にしててね  本人が何も言わないから分からないけれど」 そう言って少し眉を下げる。 ――――なんだろう  胸が落ちたような感覚が 鈍い痛みを伴ってじわじわと広がっていく
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

448人が本棚に入れています
本棚に追加