渋い現実

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(―――――――――――――) 遠ざかっていく後ろ姿を眺めながら その腕を取ろうかどうか、迷う。 だけど振り切るよう足を速めて、 伸ばした指先が山梨さんに触れる瞬間、 「 そうする相手、間違ってるだろ 」 その声に思わず足が止まって、 何も掴めなかった手が空を切る。 (………え… ) 私を追い抜いていく彼を見上げるけれど、 その瞳は相変わらず奥が覗けなくて (……なによ、それ……) 跳ねそうになる心臓が、少し痛い 「おーい、何してんねん  二人ともついて来いよー」 呆れたように振り返る山梨さんに、 私は「すみません」と眉を下げて 急いで傍へと駆け寄った。
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