渋い現実

30/32
前へ
/32ページ
次へ
「―――じゃ仕切り直し!   アヤちゃん誕生日おめでとー」 「 ありがとうございます 」 山梨さんが選んだのは 何度かお客と来たことがある、少し賑やかなバー この時間は私たちのような人ばかりで そこそこ賑わっていた。 他愛のない話を重ねて一息ついた時、 赤ワインを片手に 「そうや」と彼を見た山梨さんは、 「なぁ 朔、  そういやお前んとこの会社って今ヤバいん?」 「――――――――――――」 グラスへと伸ばした手が 咄嗟に止まる。 (山梨さん……) 正面切っては聞けない話題なのに、 この直球さ なんというか… 本当に凄い ちらりと彼の顔を窺うけれど いつもと変わらない表情に少しほっとする。 「やばいって…  まぁやばいかと聞かれたら  違うとは言えないけど」 「やろーなぁ   テレビめっちゃ騒いでるやん」 ぐい とワインを飲み干して 「まぁけど」と彼を横目に続ける。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

448人が本棚に入れています
本棚に追加