渋い現実

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暫く聞き役に回っていると、 はっとした表情で私に目を向けた店員は、 「すいません…!  折角のデートなのに話込んでしまって」 「―――そんな、私もサッカー好きですし」 綺麗な笑みを向ける私を見て 富士川さんは苦笑しつつ「ごめん」と口にする。 「本当だ、小川さんと話をしに来たのに  ―――ということで、もう邪魔しないでね 」 軽く笑ってジーマを手に取る富士川さんに、 店員も笑いながら傍を離れた。 ( デート……) そう、これは大事なデート 富士川さんとは…もう次の段階に進まなきゃ そう心に言い聞かせた時、 「あ、そうだ  帰国した日に久々に渡瀬くんと会ったよ  あちらも今、忙しいみたいだった」 ざわめき混じりに届いた声に、 ジーマへ伸ばした手が止まった。
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