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胸に置いた指をそっと外すと、
山梨さんは大きな笑顔を置いて踵を返す。
「じゃーな、アヤちゃん
また稲川行こうな」
「……はい、
是非ご一緒させて下さいね」
同じように笑顔を向けるけれど、
本意を掴めないまま大通りへと去る背中に頭を下げた。
後ろ姿が見えなくなると
しんとした路地に冷えた風が吹き抜けて、
さっきまでの空気が変わる。
少し間を置いて彼に向き直ると、
「渡瀬様、
今日は来て下さってありがとうございました」
そう綺麗に口元を上げた。
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