冷たい理想

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すっと目を細めるその横顔に、 私は一段と綺麗に微笑んだ。 だけど、 「相変わらずお忙しいみたいですど  あまり無理しないようにして下さいね」 そう言って少しだけ眉を下げれば 私を見る眦は一層柔らかいものに変わった。 日本酒を飲みながら 他愛もない話も肴に、少しずつ箸を伸ばす。 お酒が進んでいるからか、 富士川さんの顔は心なしかいつもより赤いような気がした。 大阪での少し変わったお客の話や、 最近行った接待ゴルフの話 製薬業界の話なんかをしながら 並んだ料理が綺麗に無くなった時、 一息置いて静かな声が耳に届く。 「前に少し話したけれど…  渡瀬くんに事業提携をしないかと  もう一度聞いてみようかと思ってるんだ」
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