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流れる空気が胸に沈んで、苦しい
富士川さんは私よりもずっと彼と旧知だし
仕事抜きでただ心配なんだろう
だけど私は――――
言いようのない痛みを逃がすように、そっと手を伸ばす。
骨ばった手に自分の指先を重ねると、
「……もう、やめませんか?」
消えそうな程細い声を絞った。
「…え?」
「今はせっかく富士川さんと二人ですし
他の男の人の話は…聞きたくないんです」
ゆっくりと隣を見上げると、
その目にははっきりとした驚きが浮かんでいた。
触れた手から、じわりと熱を感じる
その確かな手応えで
ざらつく胸を誤魔化しながら、瞳を潤ませた。
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