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「―――――――――――――」
女の顔なんて記憶に残らない
だけどその顔は数時間前に見たそれで、
(ローツの……)
誰だか判ったと同時に、もう一度息が漏れる。
そのまま不自然にならない程度に目を逸らした。
だけど、
「……こんばんは、渡瀬さん 」
はっきりと俺の名を口にして、
その女はにっこりと微笑みかける。
「………………」
逸らしていた視線が、微かに上がった。
それなりに度胸があるのか
それともただ空気を読まないだけなのか
”話しかけるな”と暗に伝えた筈の俺の前の椅子を引いて
田中たちの質問に答えている。
(…まぁ、どっちでもいいけど)
どちらにせよ、
仕事以外の接点を持つつもりはない
そうして気楽にしようとしていた飲み会は
女が入るという予想外の展開で始まった。
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