387人が本棚に入れています
本棚に追加
『 会社の為に結婚してくれ 』
そんな風に言われた事はない
だけど同族経営をしている以上、
迫られるのはある意味当然の事で、
実際、父も母も見合い結婚だった。
”ただ孫が幸せになれば”
祖父がそう願っているのも嘘じゃない
でも、残念ながら俺にその気はなかった。
この年で女を知らない訳じゃない
だけど男と女では価値観が絶対的に違う
俺は重い気分を振り切るようにソファーに鞄を放った。
金銭的な問題だけならホテル住まいでも構わないし、
その方が楽だけど
ずっとこのままなら
家に戻れと言われるのは時間の問題だろう
「…早くどこか決めないとな」
ぽつりと漏らしつつ、
眼下に広がる東京の夜景に目を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!