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「――――よければ飲み直しませんか?」
言いながらローツの女が俺へと手を伸ばす。
だけどその手に掴まるよりも先に歩き出すと
細い手はそこで止まり、
小さな苦笑いと共に後ろをついて来た。
「俺、このまま会社に戻るから 」
「えっ 渡瀬!」
食事の最中に雨が降り出した事に気付いた俺は
会計を済ませた時にタクシーも呼んでおいた。
田中たちの驚く声が聞こえるけど、
これ以上女たちと居るのは面倒だし
後は皆で楽しく仕切り直してくれたらいい
今しがた到着したタクシーに
呆然と見送られながら身を滑らせて、
その場を後にした。
ガラスについた小さな雫が流れ落ちた時、
目を閉じつつ数時間前に祖父から来ていたメールを思い出す。
今からの行先は、正確には会社じゃなく実家
『大事な話があるから、
遅くなってもうちに来なさい』
それがろくな内容じゃないと
予感していたけれど、
突きつけられた話はやはり頭の痛い内容だった。
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