本性はどれ

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「―――――――――――」 俺の後ろをずっとついて来る、一台のタクシー それに気付いたのは会社を出て暫くしてからの事 何か面倒事かと撒こうと ミラー越しに後ろを見た瞬間、思わず軽い息が漏れた。 後部座席に小さく見えるその女からは 何の音沙汰もなかったし、 あれきりだと思っていたのに 連絡先を知らないなら それは当然といえば当然だったけれど 一昔前の刑事ドラマのような行動に 持っていた印象をまた変えざるを得ない。 何となく掴みかけた欠片を手放した気持ちになりながら 俺は自宅のマンションに戻った。 車を止め、部屋に戻ろうとエレベーターボタンを押す。 ここはセキュリティはしっかりしているし、 つけて来た所で入れはしない だけど、 (…ほんと、なにあの女……) だんだんと下がるランプを眺めながら 大きくのため息を吐き出すと、 俺は今しがた開いた扉を背に脇の階段を上がり始めた。 つい最近知ったこの通用口から外に出ると 道路の端で上を仰ぐ女が目に留まった。 その表情は思っていたのとは違う、少し不安げな顔 さっき俺が車を通したシャッターに目を向けたり、 また上を仰いだり (――――――――――――) 本当、どうしてそんな顔なのか 俺を掴まえられる保障なんてないのに きょろきょろとしていたアヤが 迷ったようにエントランスへと一歩踏み出した時、 「昼はローツの受付、夜はホステス、  ――――で、今はストーカー?」 「―――――――――――」 びくり、と肩が跳ねたアヤは 驚いた顔でこちらを振り返る。
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