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閉じた自動ドア越しに振り返ると、
訳が判らないとばかりに大きく目を開いていて
(…俺と別れる時はいつもそんな顔だな )
苦笑気味に小さな息を吐き出すと、
ゆっくりと先のエレベーターへ歩き出した。
まぁ普通あれだけの事をされたら
俺と関わろうなんて気は失せるだろう
二度と家に来ないようにああしたけれど、
多少の後味の悪さは否めない
エレベーターに乗り、あの時と同じように唇を拭うと
薄い色が付く。
その指先を擦りながら
(…まぁ、どうでもいいか……)
あの女とどうなる気もないし、
仕事以外で会うのはこれで最後だろう
そう思っていたのに
世間というのは俺が思っているよりもずいぶんと狭かったらしい。
まさかアヤが富士川さんと知り合いだったなんて
全くの予想外だった。
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