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―――バタン
後ろ手にドアを閉めれば
その音が閉ざされた部屋に大きく響く。
最近はあまり寄らなくなったここは
相変わらず窓の向こうに東京の夜景が煌めいていた。
靄のかかる頭でその場から動かないでいると、
アヤは俺の腕を離し、鞄から何かを取り出す。
「…どうしてそれを飲んでまで、
俺と寝ようと思った?」
それがピルだと気付いた時、
ゆっくりと近付きながら訊ねた。
「――――――――――」
意図しない質問だったのか、
むせたアヤは口元を拭いつつ、
「…この間も言ったけど、自分の為だから」
ちらりと俺を見上げ、抑揚なく呟く。
” 自分の為 ”
確かにそれもそうなんだろう
―――だけど、
「後付の理由は置いといて、
意思表示としては十分だったけど、
本意は…何?」
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