溶けない肌

36/39
前へ
/39ページ
次へ
あれから数週間が過ぎただろうか 何か言われるかと思ったのは杞憂だったらしく、 祖父も父も仕事は普段通りで、 いつものように週末は怜奈の相手をしてくれと 頼まれたくらいだった。 富士製薬とローツとの業務提携の話は 折り合いがつかずに一旦保留になり、 どうするべきか思案していると、 「……って、  ちょっと朔ー、聞いてたー?」 俺の肩に軽く手を置いた怜奈は、うろんな目で俺を見上げる。 「あぁ、…何?」 「だから、パパがあと30分くらいで着くって」 昨日から怜奈の父――― 叔父さんが日本に仕事で来ている。 仕事は口実で、愛娘の様子が心配なんだろう 前の車のランプを眺めながら曖昧に返す俺に、 もう、と怜奈は頬を膨らませていた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

466人が本棚に入れています
本棚に追加