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あれから数週間が過ぎただろうか
何か言われるかと思ったのは杞憂だったらしく、
祖父も父も仕事は普段通りで、
いつものように週末は怜奈の相手をしてくれと
頼まれたくらいだった。
富士製薬とローツとの業務提携の話は
折り合いがつかずに一旦保留になり、
どうするべきか思案していると、
「……って、
ちょっと朔ー、聞いてたー?」
俺の肩に軽く手を置いた怜奈は、うろんな目で俺を見上げる。
「あぁ、…何?」
「だから、パパがあと30分くらいで着くって」
昨日から怜奈の父―――
叔父さんが日本に仕事で来ている。
仕事は口実で、愛娘の様子が心配なんだろう
前の車のランプを眺めながら曖昧に返す俺に、
もう、と怜奈は頬を膨らませていた。
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