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小さく息をつきながら
フロントに向かう後ろ姿を眺める。
怜奈らしい言い分だけど、
毎回これに付き合うのは疲れるし、面倒でしかない
( …叔父さんも大変だな )
キーを片手に戻った怜奈は、
嬉しそうに俺を引っ張りエレベーターへと歩き出した。
「朔に会いたがってたから、パパ喜ぶよ」
「…あぁ、数年ぶりだしな」
軽い音を立ててドアが開き、中へと視線を移す。
―――瞬間、
意図せず目が合い、徐々にそれが開いた。
「―――――――――――」
壁際に立つ相手は同じように瞳を固まらせる。
だけどすぐに視線を逸らして
俺の視界から出て行こうと動き始めた。
頭の中が白く冷えていく感覚の中、すれ違いざまに横顔を眺める。
けれど足早に脇を通り過ぎた真白の淡い香りしか
その場に残らなかった。
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