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エレベーターに乗る怜奈に一歩遅れて、足を踏み出す。
ドアが音を立て、
閉まる直前に微かに振り返った。
肩越しに目に入るのは暖色の灯りだけで、
もう二人の姿はない
(…本当…… 、)
今まで殆んど頭の中から消えていたのに、
予期せぬ時にこんな場所で遭遇するなんて
微かに淡い香りの残る、閉ざされた空間
重いような虚無のような胸の中、上昇するランプを眺める。
”ああいった女”だなんて、初めから判っていた事
隣にいた男をはっきりと見た訳じゃない
それでもその男が『彼氏』でない事は明白だった。
(だいたい……)
今すれ違ったのは”アヤ”なのか ”真白”なのか
17階でドアが開き、怜奈が動き始める。
俺はため息を置いて、
その香りを振り切るようにエレベーターを後にした。
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