傷痕

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『今度一緒に食事に行かないか  この間先に帰ってしまったし、  お詫びになれば と思うんだけど』 そんな電話を富士川さんから貰ったのは、昨晩の事 仕事の事で少し話がしたいと思っていた矢先の電話に、 俺は二つ返事で頷いた。 けれどその後言われたのは、 真白も誘おうとしているという言葉だった。 富士川さんは 俺たちはそこそこ仲がいいと思っている節がある。 先に帰った事を申し訳なく思っての事だろうし、 「そうですか」と短く約束を交わしたけれど、 「――――――――――」 ベッドに腰を落としながら、大きく息をつく。 アヤなのか真白だったのかは知らないが、 ホテルですれ違ったのは数週間前のこと 最後に見た顔や鼻を掠めた香りが脳裏によぎる中、 ちらりと携帯を横目に眺めた。 一か月近く前に追加したアドレスは、 結局一度も開かずにそのままで (―――――――――――――) 富士川さんが指定した日は、来週の土曜日 俺は手の甲を額に当て、そのまま後ろに体を傾けた。
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