見せない心

3/37
前へ
/37ページ
次へ
意図も意味も理解出来ない そんな表情で俺を見上げるアヤに、 何か、と口を開こうとした時、 「やからさぁ、  それが何の真似かって聞いとんねん」 痺れを切らしたように山梨が一歩前へと踏み出した。 (……なんの真似…、) 内心自嘲の息が漏れる。 俺自身、こんなことをする自分が説明出来ないのに 言葉にするなんて不可能だ ―――だけど、 その目を見返しながらふっと辿り着いた理屈は、 「目の前であんな風に出られたら  流石に気分悪いだろ   ―――――それだけ 」  『 気分が悪い 』 大きく吹いた風がアヤの声にならない声を攫い、 掴まれた札束がバタバタと音を立てる。 ―――そう、それだけで俺はここにいる 山梨とそうなるかもしれない事が、 胸に広がる黒い染みとなる事を判っていたから
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加