見せない心

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「それ、俺の連絡先やから  絶対に連絡してきてやー」 金を掴んでいない右側の手を取ると、 名刺を握らせて見慣れた笑みを浮かべた。 ひとまず下がった事に 内心息をつきながら視線を移そうとした時、 視界の隅で何かが動く。 下からアヤを覗きこんだ山梨が 軽いキスをした瞬間、微かに目が開いた。 「――――――――――――」 だけどされたアヤはもっと大きく目を開き、 ぐらりと体を揺らす。 「―――これで今日は我慢したるわ」 ふたつの驚きを一気に集めたまま、 悪戯な目がちらりと俺に向き、 (その表情…、) 嘆息混じり中何か言おうとするより先に、 ひらひらと手を振って山梨は大通りへと消えて行った。
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