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その目はには沢山の街の光が反射して
一切の感情を消していた。
(――――――――――――)
…見たいのはそれじゃない
目の前の唇に手を伸ばし、
唇を拭うように人差し指をそっと動かした。
「――――――――――」
ほんの少し、アヤの体が強張る。
冷えた温度を感じながら
驚くアヤと一瞬だけ視線を重ねた。
はっきりとしない曖昧な感情
そんな不可解な胸の中、
咄嗟に取った行動の辻褄が合わない
これから先の事は何も頭にないまま、
視線を外して先へと歩き出す。
だけどアヤはその場で動かなかった。
どんどんと開く距離に
無意識にさっき触れた指先を握る。
(―――本当…、)
山梨との間に割って入ろうなんて、
さっきの情景を目にしなければ思わなかった筈なのに
いつまでも聞こえない足音に、ちらりと後ろを振り返ると、
煌々とした路地の真ん中で、
アヤは俺と目を合わせるとこちらへ駆け出した。
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