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降りたタクシーが遠ざかり、先へと歩き出した時、
「今は彩じゃないって言ってるでしょ」
後ろから届いた声に一瞬足を止めそうになる。
「―――――――――――」
あの時は紛れもなくアヤだったから
そう口にしたけれど、
「―――なら、“ 真白 ”?」
俺が“アヤ”と言う度に否定する事に
意図はあるんだろうか
そう訊ねつつエレベーターのボタンを押せば、
真白は目を開いて俺を見上げる。
(…なに、その顔……)
その仕草や表情が何とも言えず、
「……”朔”って呼ばれたから
そう言い返してみたけど?」
カチ と軽い音がしたと同時に
ゆっくりと揶揄を含んだ目を向けた。
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