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「――――そ、れは…」
何か言おうとするのに声にならないといった風に、
真白はぐっと唇を噛むと、
あいたエレベーターに身を滑らし、何も言わずに目を逸らした。
「……………………」
ばつが悪いと顔に書いた横顔を見ながら、
心の端が微かに握られる。
名前なんて特定できればそれでいいと
気にしていなかったのは俺だけで、真白にとっては“特別”のようだった。
エレベーターを降りてラウンジへと歩き出した時、
胸元に入れていた携帯が震え始めた。
仕事だと判るそれに店員に一言声を掛け、
先に行っているように真白に告げるとその場を離れる。
経営指導をしている他の顧問からの電話で、
今判る内容だけを返し、あとで話をすると通話を終えた。
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