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取り立てて何も起こらないこの空気は
思えば真白といて初めてで、
朝の空気がそうさせるのか、
お互い言葉がないことも自然だった。
「あそこで待ってるわから」
ラウンジを出て精算をしようと下りた所で、
真白が指差したのはフロントから続く廊下の先だった。
(確か……、)
箱庭のような場所があったと思い出して軽く頷けば、
真白はくるりと俺から背を向ける。
そうして精算を終え、
木洩れ日が明るく照らす廊下から外へと出ると、
ふわりとした風と共に夏の暑さが体を包んだ。
そのまま少し視線を彷徨わせても、
先にいるはずの姿は見当たらない。
そのまま奥へと足を進めた時、
胸元に入れていた携帯が震え始めた。
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