衝動

21/38
前へ
/38ページ
次へ
全てが置き去られるような感覚の中、 静かに目を開けた真白は、 「…じゃあね、渡瀬さん 」 唇の隙間からそう声を絞ると、 痛みを乗せた瞳で俺を見据える。 (―――――――――――――) 吐息交じりの囁きが大きく吹いた風に攫われた。 同時に動き出した時間が 身を翻す真白を浮かび上がらせ、 去っていく足音だけをその場に残す。 ―――――何? 遠くでドアが閉まる音が風に乗り、 だらりと下がったままの手からは 甲高い怜奈の声 『―――ちょっと、朔? 』 「………後で行くから、  管理人には名前と俺の従妹だと告げて」 それだけを口にすると通話を遮断した。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加