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全てが置き去られるような感覚の中、
静かに目を開けた真白は、
「…じゃあね、渡瀬さん 」
唇の隙間からそう声を絞ると、
痛みを乗せた瞳で俺を見据える。
(―――――――――――――)
吐息交じりの囁きが大きく吹いた風に攫われた。
同時に動き出した時間が
身を翻す真白を浮かび上がらせ、
去っていく足音だけをその場に残す。
―――――何?
遠くでドアが閉まる音が風に乗り、
だらりと下がったままの手からは
甲高い怜奈の声
『―――ちょっと、朔? 』
「………後で行くから、
管理人には名前と俺の従妹だと告げて」
それだけを口にすると通話を遮断した。
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