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瞬間、無意識に駆け出そうとする。
だけど、
“追いかける? どうして?”
頭の中でもう一人の自分が呟いて、
『…じゃあね、渡瀬さん 』
同時に耳の奥で聞こえたのは、抑揚のない冷えた声
(―――――――――――――)
携帯を握りながら、去っていく残像が脳裏に浮かんで、
(どうして……、)
さっきまではそんな様子はなかったのに、
どうして今のような顔を―――、
酷く傷ついたような顔で俺に触れたのか
唇にはまだ微かに真白の余韻が残っている。
だけどそれは俺の胸に流れる“痛み”で、
喉の奥が苦く感じた。
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