386人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
それから暫くして
指定した時刻丁度にドアが開く。
おもむろに目を向けると、
仏頂面の真白が顔をしかめている。
“文句を言いたい” と顔に貼り付けたその表情が
今しがた見ていた写真の女とは正反対で、
俺は無意識にふっと息を吐き出すと、
デスクから身を起こして廊下へと足を向けた。
「…ねぇ、誰かに見つからない…?」
ゆっくりと階段を降りながら、
真白は声色を低くして先を下りる俺の肩に手を置く。
不安を表すその仕草を、
さして気にせず乾いた息を吐き出した時、
「―――坊ちゃん! お帰りだったんですか」
聞き慣れた声と、それを追って
玄関で靴を履こうとしていた祖父がこちらを振り返った。
最初のコメントを投稿しよう!