過去の楔

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『誰?』と訊ねるその表情に、 ゆっくり足を止めてその女の顔を眺めた。 「…小川…、  小川真白なんだけど、」 「―――え?」 「気分悪くなって休んでるから  ここには戻らない  幹事か誰かにそう伝えて」 「…えっ お、小川さんが?」 動揺した女は何か言いたそうだったけれど、 言葉を待たずにそのまま踵を返した。 いつの間にか握りしめていた ボトルが鈍い音を立てる。 部屋の前で少し視線を彷徨わせても 怜奈の姿は見当たらず、 部屋を横切りながら 感情を鎮めるように長い息を吐き出した。
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