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バタンと、
後ろ手に閉めたドアが大きく耳に響く。
真白とはあの日…、
居酒屋で別れて以来だった。
無意識に閉じた瞼の裏には、
宙を舞う紙幣と大きく開いた瞳
「……………………」
さっきの空気からはっきりと
俺と会いたくなかったと感じた。
だけど俺は――――、
会わない間、
ふとした時に今の顔を思い出して
苦さだけが色濃く残る。
それを繰り返すうちに、
いつの間にか心に棲みついていた事実を自覚させられた。
視界の端には冷めきったコーヒーと
手つかずのデザート
(――――――――――――)
濁った深い息を置いて、
重い足を急かして部屋を後にした。
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