過去の楔 #2

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湿った風が体を撫でて、 重い足取りで一踏み出した時、携帯が短く震えた。 遠ざかるエンジン音を聞きながら画面を開くと、 『 馬鹿って何?って、  バカはアホの事やわ!  頭ええくせに、そんなんも知らんのか  バーカ! 』 その文を目にした瞬間、 不本意でも小さく笑みが浮かぶ。 山梨はいつもこんな調子で、 もしかしたら俺の知らない俺を見透かしているのかもしれない 無意識に空を仰ぐけれど、見えるのは重い雲と闇だけ それでもふっと頭を掠めるのは、 何ヶ月も前に上を見上げていた横顔で、 (……何をしてるんだか……、) 真っ暗な俺の部屋をから目を外すと、 明かりの灯るエントランスへと歩き出した。
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