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湿った風が体を撫でて、
重い足取りで一踏み出した時、携帯が短く震えた。
遠ざかるエンジン音を聞きながら画面を開くと、
『 馬鹿って何?って、
バカはアホの事やわ!
頭ええくせに、そんなんも知らんのか
バーカ! 』
その文を目にした瞬間、
不本意でも小さく笑みが浮かぶ。
山梨はいつもこんな調子で、
もしかしたら俺の知らない俺を見透かしているのかもしれない
無意識に空を仰ぐけれど、見えるのは重い雲と闇だけ
それでもふっと頭を掠めるのは、
何ヶ月も前に上を見上げていた横顔で、
(……何をしてるんだか……、)
真っ暗な俺の部屋をから目を外すと、
明かりの灯るエントランスへと歩き出した。
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