渡瀬編 心の行方

心の行方

ここ最近は観ていないけれど、
自宅で映画が観れるようになって以来
映画館に足を運ぶことはなくなった。

それでも雰囲気は変わってなくて、
ポスターを横目に真白の傍に近付く。

「で、どっちを見るの？」

１５時３０分からの映画は２つだけ

一つはハリウッドのＳＦファンタジー、
そしてもう一つは恋愛ものの邦画だった。

どちらの映画も真白のイメージになく、
観たいという言葉はいよいよ信憑性が薄れる。

そんな心中をよそに真白はゆっくりと
「こっちが見たいの」と指を伸ばした。

「―――――――――――」

二分の一の確率だけど
どちらかと言えば反対の方がよかった。

大きなため息が漏れる俺を一瞥すると、
真白は「ちょっと待ってて」と足早にカウンターへと向かった。