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耳元にある髪を梳くと、小さく唇を開く。
それは今まで紡いだことのない言葉
だけど、いつからか生まれた感情は
だんだんと大きくなって、俺の理念や心ごと呑み込んだ。
「―――好きだ 」
言葉を繋いだと同時に、
シャツを握る手に力が強くこもる。
「―――――――――――」
顔を埋めようとする真白を柔く制すように、
俺は頬を包んで視線を合わせた。
(その目…、)
今どんな目で俺を見ているのか、
きっと判ってなんていないだろう
だけど、それで構わない
これが俺だけが知る、『小川真白』だから
「…真白 」
静かに名を口にすれば、
言葉に出来ない顔で俺を見上げる。
心を写し出して、
溶けて重なる想いを確かめる。
ゆっくりと瞳を伏して体を傾ければ
鼓動が穏やかなものへと変わって、
声にならない声がもう一度心に響いた時、
「……ずるい 」
俺は細く絞った声を飲み込んだ。
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