『惑星葬』

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あの戦争から数十年の時が経った。 幾星霜を経ても女性の……いや、人間の気持ちの在り様はそうそう変わる物ではない。 例えば、贈り物として『花』をプレゼントして喜ぶ。 その気持ちが永久(とわ)であるように。 茶褐色の荒れ果てた大地を、テンガロンハットを被った男が歩いていた。 遠くに見えるは傾いたビル群。 お構いなしに降り注ぐ日差しに、男はワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながらそれらを見つめていた。 地球からの距離、およそ約8000万kmに位置するこの星にもう名前はない。 たまたま惑星間旅行をしていた男とその妻が一番気に入った場所だった。それもそのはず。 銀河圏を征服した人類は星々を住みやすい土壌に変え、リゾート惑星として利用していたのだ。 この星もそういったリゾート惑星として育てられた。 数千、数万ある、バラバラに散らばった星のただ一つ。 この星に、もう名前はない。 人間の愚かしい所は辺り構わずに戦争の材料にしてしまう所だ。 元は青々とした美しい星だって、最新兵器の手にかかれば星ごとその形を変えてしまう。 しかし、戦争が終わり勝敗が決した今、それを糾弾する人間もいない。 おそらく数百年。 いや、数千年は落ち着いた日々が続き、そして再び争いが起きるであろう。
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