第1章

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 そのゆりちゃんが最近、おかしい。大学に入ってから2ヶ月経った頃から、ため息が多くなった。食欲もあまりないみたい。ゆりちゃんが食べないから、私も少し緩くなってしまって、このまま痩せていっちゃったらどうしようって心配になる。  ゆりちゃんは、木曜の教養の授業「心理学概論」のときはいつも木原くんの隣に座る。木原くんは、ゆりちゃんとは学部も違うらしいけど、教養の授業だけ同じになるしゅっとした男の子だ。水曜日の夜のゆりちゃんはすごく元気。お風呂にも長く入るし、そんなときは決まってローズのアロマオイルを一滴、お風呂に入れている。色白なゆりちゃんの頬はほんのりピンクになって、お風呂からでると、ゆりちゃんは迷わず私を選ぶ。ゆりちゃんが楽しい日に私はいつもゆりちゃんと一緒にいられる。そして、私はゆりちゃんと一緒にネイルを落として、ピンク色の可愛いネイルを塗り直すんだ。水曜日の夜のゆりちゃんは、ゆったりした音楽を聞きながら、木曜日の洋服選びをしている。ゆりちゃんの服は最近、急に女の子っぽいものが増えた。前は結構シンプルでときにシャープなおしゃれさんだったのだけど、今は洋服屋さんに行くと短いスカートやワンピース、ふんわりした印象の洋服を選ぶようになった。その可愛い洋服たちの中から、最も可愛い洋服の組み合わせを選んでハンガーにかけておく。そして、それを見て満足して、ゆりちゃんはゆっくりと布団に入る。ゆりちゃんの1ルームの部屋は幸せな空気で満たされる。  ある木曜日、ゆりちゃんは見てしまった。木原くんが、同じ学部の女の子と仲良さそうに歩いているのを。女の子は木原くんに肩でぶつかって木原くんも女の子にぶつかって、そうやってじゃれているのを見て、パンツの私でも「これが付き合ってるってことなんだ」ってわかった。ゆりちゃんは急に授業がある教室とは別の方向に走り出した。ゆりちゃんは走って走って、ゆりちゃんの足が地面を踏みしめるたびにかばんの中のプラスチックのペンケースがかたんと音をたてていた。
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