第3章 赤坂の夜

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直斗は、ナナの作ってくれる水割りが気に入っていた。 球状の氷をグラスに入れ、そこに酒を注ぎ、マドラーでひたすらかき回す。 笑顔で話しながらも、手は休めない。 直斗がタバコを吸い始めると、水を入れ、さらに一混ぜ。 グラスに着いた水滴を拭い去り、ようやくグラスが渡される。 ナナと飲み始める時の儀式。 更に儀式は、続く。 直斗は、渡されたグラスを一気に空ける。 2杯目もナナは、手を抜かない。 2杯目のグラスが直斗の手に渡る頃、ナナにはオレンジジュースが用意される。 直斗は、ナナにはお酒を飲ませない。 「20歳になったら。」 もう口に出さずとも、暗黙の了解。
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