第3章《澤木》

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窓から、フェイバリッツを眺めて 「まだ、まだ頑張らないとな」と 自分に言い聞かせた 美術大学の建築科を出て、すぐに 建築会社に就職して、25のとき 初めて先輩について鎌倉のマンション の設計をした。 完成後、内覧会に来た不動産会社の 社長に、エントランスが冷たい この立地を選ぶ、お客様が何を 求めているのか君わかる? と質問を投げ掛けられたことがある 今思えば、若さからなのか尖ってた 自分は、格好いいものを提供すれば 良いと思っていたから、この質問には ドキッとさせられた。  海も山もあり自然に癒される環境を 選ぶ人 スローライフを満喫したい人 優しい空間を求めている人 エントランスはね、いらっしゃい お帰りって出迎える場所だよと 教えられた 今さら、建築のやり直しなんて できるはずがない。 せめて、俺は土地のイメージのままに その時のひらめきで海岸で流木を広い 集めベンチとスタンドを作って飾る ことにした もともと手先は器用で、大学の友人に 彫刻家や工芸家もいたから、いつも 作品を見て、目は養われていたはず 後日、不動産会社の社長に 「君、良い物飾ったね。 こういった一品が心つかむね。 お客さんは、お気に入りの環境を 作りたいって思うんだよ。 君、店でも出したら成功 するよ!」 と、言われたことを思い出す
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