第1章

5/11
前へ
/11ページ
次へ
家に帰る途中、公園のブランコに一人座っている女の子を見つけた。 「そこで何してるの?」 気になって声をかけてみる。 私の声に反応した女の子が顔を上げると、 その子は同級生の有坂さとみだった。 「あ、いや別に…江崎さんは?」 「私は帰る途中にあなたを見かけたから。あのさ…有坂さん学校楽しいと思う?」 「え…? 私はあんまり…でも、勉強しなくちゃ、自分のためにならないし」 「そりゃあそうだけどさ。先生は怖いし。だからと言って家にも帰りたくないんだよね」 「どうして?」 「うちの母とは血が繋がってないんだ。父とは繋がってるけど、家にめったに居ないから母と二人っきり。優しい人だよ、とても。でも、やっぱり他人なんだよね。小さい頃は本当のお母さんだと思ってたけど、本当のことを知るとそれまでの関係が壊れちゃうんだ。だから、一緒に居てもなんか気まずいの」 あれ? 私なんてことを。 何でこんな重い自分の身の上話をしてるんだろ? クラスの中でもおとなしくて、あまり話したことない有坂さんに。 「そうなんだ…私の家も似たようなものだけど」 似たようなものという言葉で我に返った。 「似たようなものってどういうこと?」 「私、8歳の時に両親を交通事故で一度に亡くしたんだ。今はお父さん側の叔母さんに引き取られて一緒に暮らしてるんだけど…」 有坂さんも私と同じで本当の親がいないんだ。 まぁ、私の場合父親はいるんだけど。 何か感じるものがあったのかな。有坂さんに身の上話をしたのは… 今まで、自分の身の上話なんか誰にも話さなかった。 ただ単に、「かわいそう」とか言って同情されたくなかったのが理由。 有坂さんにだって、同情されるかも知れなかったのに… 急にあんな話をしてドン引きされる可能性だってあったな… でも、有坂さんは私の話を真剣に聞いてくれた。 ・ ・ ・ どのくらい話をしたのだろう。 気がつくと辺りは暗くなっていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加