第零話 医者

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第零話 医者

ポツン…… 雫が髪から滴り、水面に波紋を起こしながら堕ちる 金色の長い髪はまるで女性のようにキラキラと輝いていた。彼は蹲りながらそして頬から滴る涙に濡れながら呟く 「……独りは、淋しいよ……」 あぁ…… 僕は、何の為に……? …………違う。望んだのか……? こんな、こんな独りは淋しいと、僕は……忘れたから……? 淋しいと感じでどれくらい経っているのか…… 自身の手を見ながらまた俯く 「…………。 誰?そこに居るのは?」 音もしなかったが確かに気配はした。だから声を掛けてみるとその誰かは誤魔化すこと無く現れた 「僕に何か用かい……?」 ……そう言えば、誰かを見るのは久々だ…… フードを被ったその人は見える口元を微笑ませ、タンッと彼の元へと飛ぶ すぐ隣に立って来たが別に追い返す理由もないからそのまま放置した 「……隣いい?」 「ん……」 隣に座ったその人は柔らかな口調で口を開く 「ここにずーっといたの?」 「うん……」 「淋しくない?」 「…………淋しいよ……」 「そっか……」 そう言うとその人は少し考えてバッと立ち上がる さすがに僕もびっくりした 立ち上がったその人は僕の顔を覗き込むように微笑む。下から見上げているから顔が良く見えた あれ……僕はこの人に会ったことが……? そんな疑問を他所にその人は僕の腕を引く 「私の"世界"においで! そしたら貴方はきっともう淋しくないから」 「え……?」 微笑むその姿に魅入られた、救われたのは今から数千年も前のことだ……
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