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そこで、そうだ!と手を打った父はそのおじいさんについて、店員のお兄さんに聞こうと言い出しました。しかし、父の英会話能力では拙いので、S子さんが代弁。
先ず、日本語メニューがあれば欲しかったので、「日本語のメニューはありますか?」と尋ねました。
「申し訳ありませんが、置いていません」
「以前来たときに、此方の従業員?のおじさんが出してくれたんですが…」
「そうなんですか?でも、うちでは日本語のメニューを置いたことはありませんよ」
S子さんと店員さんが英語でやり取りし、それをS子さんに通訳してもらう形でそう聞きました。
皆一瞬、え?と思いましたが、置くのをやめてしまったのかも、とかおじさんが隠して持ってたのかも。と思い、次に「では、おじさんは…?」と例のおじいさんについて尋ねました。
すると、
「日本語の分かる従業員はいないはずです。別の店、或いは前の店とかではありませんか?」
と返されました。勿論そのはずはありませんでした。
聞けば店は長く出ていて、此処数年では店舗が変わったことなどなく、父に限らない三人が三人、店の隅にある大きな、けど空の水槽と内装に見覚えがありました。
確かに数年前と同じ店。しかし、店員は知らないと言うばかり。
ついには、
「もしかしたら、その当時は私が勤める前だったのかも知れません」
と、長年変わらず勤めているシェフや今店の奥に居るだけの他の店員へ訊きに行ってきます、と一度その場を離れました。
今までの話に父は、そんなことはないだろ?と言い、辞めたり、実はオーナーで入れ替わったとかじゃないのか?と考えました。
しかし、戻ってきた店員は、そんな人に誰も心当たりはないのだとまた、言います。
「その期間に店に入った従業員は数いても、辞めた従業員は少なく、その中におじさんと言えそうな年恰好の者はいません」
オーナーが変わってるんじゃないか、という件についても聞きましたが、そんなはずはない、とのこと。
また、日本語のメニューもその間探してみてくださったようで。
でもやはり、そんなものは見当たらず、日本語を話せるような従業員だって他の誰も知らなかった、と言われました。
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