運命の人

10/17
前へ
/68ページ
次へ
一方、綾は午前中のアポイント対応を終え、同じ地域を回っていた先輩の鳴海春子(なるみ はるこ)と昼休みに合流した。 彼女達は保険の営業職。 今日はピークタイムが終わった頃に店に入ったため、さほど待たずに席に座る事が出来た。 運ばれて来たパスタを食べながら、春子が訊ねてくる。 「お休み楽しかった?」 綾の前には、ドリアが運ばれてきた。 「はい。映画を観に行ってきました」 「彼氏?」 綾は苦笑いしながら答えた。 「いえ・・・お友達です」 春子はニコニコしながら追究してくる。 「いい男?」 誘導尋問に負けた綾は、つい誠一の事を思い浮かべてしまった。 高身長、容姿端麗。 スマートな所作、さりげない気遣い。 知り合う前には、来店する女性客と火遊びを楽しんでいるという評判を、あちこちで耳にしてきた。 「モテるタイプだとは思います」 当たり障りのない綾の答えに、春子はふうん、と相槌をうち。 それ以上訊いてはこなかったのだが―
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加