運命の人

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―季節は夏。 屋外はうだるような暑さで、道行く人々はこまめに水分補給をしながら歩いている。 エアコンが効いた映画館のロビーで人を待つ一人の女性がいた。 藤野綾、25才。 ピンク色のシフォン地のトップスに白のクロップドパンツという私服が映えるバランスの良い体型。 アップスタイルに纏めた長い黒髪。 派手すぎない化粧。 待ち合わせ相手を見つけた彼女は小さく手を振る。 紺のポロシャツにベージュの細身のパンツ姿の男性が、彼女に向かって早足で歩いてきた。 「ごめん、待たせたかな?」 そう訊ねた待ち合わせ相手の名は、井上誠一、26才。 「いえ、私も今来たばかりなので」 少し茶色がかった短髪。 整った容姿。 二人はロビーに置いてある上映スケジュール表の前に向かった。 身長180cm台の彼と165cmの彼女が並ぶと、はた目からはお似合いの恋人同士に見える。 例え現実は違っていたとしても。
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