運命の人

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綾は隣にいる誠一の横顔を見上げた。 異性を惹き付ける端正な面立ち。 「あの人かっこよくない?」 映画館に入ってきた若い女性客達がちらちらと彼の方を振り返っていく。 その視線に気づいていないのか、それともただ構っていないだけなのか。 彼は自分だけに微笑みかけてくれる。 「何が観たい?」 綾はハッと我に返り、上映スケジュール表に意識を集中した。 知り合ってからもうすぐ1年。 最初は食事に出かけるところから、メールのやり取りも含めて少しずつ関係を築いてきた。 その過程で共通の趣味が映画鑑賞である事が判って、今ここにいる。 「私はこれかこれが良いかなと思うんですけど・・・井上さんはどうですか?」 お互いの好きな映画のジャンルを加味した上で提案したところ、誠一がパッと答えてくれた。 「じゃあこっちで。チケットまとめて買ってこようか?」 「いえ、一緒に並びましょう。お金も折半させて下さい」 好意を受け取らなかったにも関わらず誠一は嫌な顔ひとつしなかった。 彼はいつだって優しい。 さりげなく、押し付けがましくもなく。 「了解」 二人はチケットカウンターの列に並んだ。
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