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―翌日。
店に出勤した誠一は、更衣室で同期の明石修治と鉢合わせした。
「おはようございます」
そう挨拶してきた修治は、わざとらしい笑顔を浮かべていた。
「何ニヤニヤしてんだよ」
「昨日久しぶりに有休取ってたじゃないですか。愛しの藤野さんとデートだったんじゃないかと思いまして」
修治はもともと洞察力に優れていたが、他人をからかうような物言いをする人間ではなかった。
彼に影響を与えられるほど近くにいて、軽口をたたくタイプの人物。
思い当たるのはたった一人だ。
「修治・・・お前いい感じに性格悪くなったよな。ケイの影響だろ」
修治はワイシャツをはおりながらさらっと言った。
「他人の彼女に向かって失礼ですよ」
(こんにゃろ、あっさり断言しやがって)
一度二人が派手に言い争っていた際、仲裁に入った事があった。
あの後から、修治とケイの仲がただの同僚以上になったような気がするとは思っていたが、いきなり確証を得ようとは。
「あー、はいはい。ごちそうさま」
祝福半分、やっかみ半分の返答を修治は華麗に受け流す。
「それはさておき、進展はあったんですか」
シャツのボタンを止めていた誠一の手がピタッと止まる。
(進展どころか・・・)
昨日指先が触れあっただけで、手を引っ込められてしまった。
あの時は気にしていない風を装ったが、今になってじわじわとダメージが来たらしい。
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