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香港・九龍島の繁華街、尖沙咀にある、とあるバー。
「ポッキーをどうぞ」
紅いチャイナドレスに身を纏った若い女性は、男に差し出した。
「日本のお菓子なのに、よく知っているね」
やたら目鼻立ちの整った、綺麗な顔立ちをした男が言う。
二十代後半ほどの見た目だ。
「この店には、日本の事よく知るお客さんが多いの。私、お客さんから教えてもらったね」
「そう。例えば、あそこにいる男とかかい?」
青年は、後ろを振り向き、向こうのテーブルにいる男をこっそり指さした。
酔った勢いにまかせて何でも答えてくれる彼女の特徴を、青年は知っていた。
「そう。あのお客さんは、日本通ね。それで凄くお金も持ってる」
「お金?」
「ここだけの話。あのお客さん、裏社会の人間ね。ほら、有名なマフィアグループ『クライム』のボスの人よ。けど私たちにとっては大事なお客さん。だから店は拒否しないね」
「そうか。ありがとう」
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