第2章

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「だから、楠野さんにお願いがあるんです。」 彼女はそう言って笑った。 その笑顔からは悪意しか感じられずに、私は思わず身構えてしまった。 「お願いって?」 「はい。アルバイトを辞めていただけませんか? 楠野さんを見ていると、どうしようもなく苦しいんです。 自分勝手だって言われても、どうしようもないんです。 絶対に手が届かない目標を見せられ続けているような、そんな感じがして苦しいんです。 いきなりは決められないと思うので、一週間待ちます。 来週の金曜までに決めてください。 楠野さんが辞めないのなら、私が辞めます。」 悪意と悔しさと妬み。 それらの黒い感情が混ざった言葉。 アルバイトを続ける自信がないと言った彼女の言葉は、私が原因なんだと言いたかったんだろうなって思った。 私の存在が邪魔。 私さえいなければ、もっと仕事もやりやすい。 私さえいなければ… そんな言葉がたくさん聞こえた気がした。
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