二、ナッパーのアッカ

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下卑た叫びが闇夜に響く。彼女の来た方向だ。ヌァンは顔を向ける。 孤独な路地裏に三人の男が枯れ枝のように立っていた。それぞれ拳銃と火炎放射器とチェーンソーを持っている。 彼の腕の中で少女がヌァンを見上げた。 「助けてよ」 強情な表情では隠しきれない恐怖が少女をか弱く見せた。螺旋街に似合わないただの少女に見えた。 ヌァンは再び男達を見る。 「お前らは何だ」 「よくぞ聞いた!」 そう叫ぶと、一番端の男が火炎放射器で辺りに炎を撒き散らした。 「早乙女家が長男!鴻鵠のイチロウ!」 次に隣の男がチェーンソーを唸らせた。 「同じく次男!盲亀のジロウ!」 最後に一番若い男が拳銃を高らかに掲げる。 「同じく三男!虎髭のサブロウ!」 サブロウが名乗りを上げ終わると、三人は声を合わせて絶叫した。 「三人揃って、我ら地獄の早乙女兄弟!」 ババーン、とジロウが呟いた。 捨てられた紙屑と共に一陣の冷たい風が吹き抜けて、その場にいた全員の顔を撫でた。 ヌァンは思った。ふざけてる。 こんな人間の存在が現代に許されていいのか。これが螺旋街という街なのか。深い。闇が深すぎる。 少女はヌァンに呟いた。 「お願い…あんなふざけた奴等に殺されたくない……」 それはそうだろう。あんなのの手にかかって死んだら、天国に行っても迫害されるに決まっている。 地獄で鬼にこの世の終わりまで馬鹿にされる。
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