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下卑た叫びが闇夜に響く。彼女の来た方向だ。ヌァンは顔を向ける。
孤独な路地裏に三人の男が枯れ枝のように立っていた。それぞれ拳銃と火炎放射器とチェーンソーを持っている。
彼の腕の中で少女がヌァンを見上げた。
「助けてよ」
強情な表情では隠しきれない恐怖が少女をか弱く見せた。螺旋街に似合わないただの少女に見えた。
ヌァンは再び男達を見る。
「お前らは何だ」
「よくぞ聞いた!」
そう叫ぶと、一番端の男が火炎放射器で辺りに炎を撒き散らした。
「早乙女家が長男!鴻鵠のイチロウ!」
次に隣の男がチェーンソーを唸らせた。
「同じく次男!盲亀のジロウ!」
最後に一番若い男が拳銃を高らかに掲げる。
「同じく三男!虎髭のサブロウ!」
サブロウが名乗りを上げ終わると、三人は声を合わせて絶叫した。
「三人揃って、我ら地獄の早乙女兄弟!」
ババーン、とジロウが呟いた。
捨てられた紙屑と共に一陣の冷たい風が吹き抜けて、その場にいた全員の顔を撫でた。
ヌァンは思った。ふざけてる。
こんな人間の存在が現代に許されていいのか。これが螺旋街という街なのか。深い。闇が深すぎる。
少女はヌァンに呟いた。
「お願い…あんなふざけた奴等に殺されたくない……」
それはそうだろう。あんなのの手にかかって死んだら、天国に行っても迫害されるに決まっている。
地獄で鬼にこの世の終わりまで馬鹿にされる。
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