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ヌァンはため息をついた。いつだってそうだ。終わったときには、殺すはずだった人間の三倍は殺しているのがこの仕事だ。
これも因果だ。
いつ果てることもない殺しの道。しかし、歩き出さなければ目的地に着くこともない。
「お前達、人を殺したことは?」
イチロウは笑顔で絶叫した。
「我が家はじいさまの代からの殺し屋一家よ!」
じゃあいいか、とヌァンは呟き、銃口を早乙女家に向けた。
その場にいた誰もが、ヌァンが拳銃を抜いたことを知覚できなかった。まるで鼻を掻くように自然に銃を取り出し、そして引き金を引いた。
タンと乾いた音がして一発目はイチロウの頭を貫いた。ジロウの頭が二発目で吹き飛ぶ。
三発目はサブロウの腹に当たった。呻き声を上げて、その場に倒れ込む。致命傷ではなかった。
一対多数ということで知らずのうちに焦りを抱いていたようだ。きちんと狙わなければ弾は当たらない。殺しにラッキーパンチは存在しない。
新たな教訓を胸に刻むと、ヌァンは苦しむサブロウに近寄った。
「うううああ…兄ちゃん…兄ちゃんんん……」
銃口を向ける。サブロウ、と声をかける。サブロウは怯えた目でヌァンを見つめ返した。
「安心しろ。じきに楽になる。お前の全てが赦される。お前の罪は全て俺のものになって、地獄の代わりに天国に行けるんだ」
それでいいじゃないか、と引き金を引いた。
まだ若い、丸みを帯びた彼の頬を弾丸が吹き飛ばして、脳を破壊した。
彼の言葉はサブロウに届いたのだろうか。死体となった今、その答えを知ることはできない。
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