偶然のアナタ

2/4
前へ
/6ページ
次へ
気づけば、僕には赤い糸が見えていた。 小指に結ばれた、細い、でも、確かな赤い糸。 道行くカップルの大半は、きちんと赤い糸で結ばれていた。 でも、時々、別の人と結ばれているのに、 結ばれていない目の前の相手と付き合っているカップルもいた。 世間を驚かせた芸能人の熱愛カップルがすぐに破局したのは、 赤い糸がその二人の間になかったから。 まぁ。 当たり前だよね。 運命の赤い糸の相手じゃないのだから。 学校でも、喧嘩している2人に赤い糸が見える。 席で本を読んでいる人にも、赤い糸はあって 誰かと結ばっているのだな、と思う。 誰にでも、赤い糸がある。 なのに。 僕の小指には、赤い糸がない。 どうして? みんなにはあるのに。 どうして僕は。 誰とも結ばれていないのだろう。 *************** 僕はその日、なんとなく夕方に散歩がしたくなった。 何も持たずに、ただ、トコトコと、気ままに歩く。 …そして、すれ違う人の小指を盗み見ながら。 僕の両親は、小さいころに他界してしまった。 親戚中を転々とし、高校生になって、 祖父母の援助のおかげで、一人暮らしをしている。 親戚は皆優しい人ばかりだったし、嫌な気持ちになったことはない。 でも、この人たちとは血が繋がっていないんだ、と思ったら、あ、一人なんだ、と思わずにはいられなかった。 学校も嫌いではないけれど、小さい頃の影響か、人と仲良くなれない。 普通に話す人はいるけれど、友達って言える人は… いるのだろうか。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加