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気づけば、僕には赤い糸が見えていた。
小指に結ばれた、細い、でも、確かな赤い糸。
道行くカップルの大半は、きちんと赤い糸で結ばれていた。
でも、時々、別の人と結ばれているのに、
結ばれていない目の前の相手と付き合っているカップルもいた。
世間を驚かせた芸能人の熱愛カップルがすぐに破局したのは、
赤い糸がその二人の間になかったから。
まぁ。
当たり前だよね。
運命の赤い糸の相手じゃないのだから。
学校でも、喧嘩している2人に赤い糸が見える。
席で本を読んでいる人にも、赤い糸はあって
誰かと結ばっているのだな、と思う。
誰にでも、赤い糸がある。
なのに。
僕の小指には、赤い糸がない。
どうして?
みんなにはあるのに。
どうして僕は。
誰とも結ばれていないのだろう。
***************
僕はその日、なんとなく夕方に散歩がしたくなった。
何も持たずに、ただ、トコトコと、気ままに歩く。
…そして、すれ違う人の小指を盗み見ながら。
僕の両親は、小さいころに他界してしまった。
親戚中を転々とし、高校生になって、
祖父母の援助のおかげで、一人暮らしをしている。
親戚は皆優しい人ばかりだったし、嫌な気持ちになったことはない。
でも、この人たちとは血が繋がっていないんだ、と思ったら、あ、一人なんだ、と思わずにはいられなかった。
学校も嫌いではないけれど、小さい頃の影響か、人と仲良くなれない。
普通に話す人はいるけれど、友達って言える人は…
いるのだろうか。
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