第1章

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 最近ファーストの様子が可笑しい。  気まぐれで、無茶を平気でし、表情が良く変わる奴だと思っていたら、ごく最近の話なのだがファーストが俺の部屋にやって来た。  部屋自体にやってくる事は別に問題ではない。次の作戦だったり報告だったりするので、頻繁にあることなのだが、内容が絶対に可笑しい。 「俺今日から此処で寝るぜ!」  枕を担いで俺のベッドに腰掛けて、いつの間にか俺のベッドで寝てやがる。  自分の部屋に行けと言っても全く行こうとはせず、頑なにその場から動こうとはしないファーストにそろそろ本気で聞いてみても良いだろうと、今夜ファーストが寝る前に尋ねようと思う。 「みねふじまた明日な。おやすみ?」  呑気に片手をヒラヒラさせて俺の部屋に向かったファーストを追いかけて、俺も部屋に入る。  いつもお前の所為で俺はソファで寝てるのを分かってるのか、分かってないのか、堂々と俺のベッドに横になり、男子高校生がするように端末を弄っているのだった。 「おい、遊ぶなら部屋でやれよ」 「そんなの俺の自由でしょーが!」  いや、確かにそうだけれどよ。そう言ってやりたいのだが、今日こそは聞いてやろうと思っているんだ。  だからわりぃけど、今日はその主張は譲れねぇんだわ。   「……んだよ」  ファーストの近くまで行き、ずっと見下ろしていれば、その空気に耐えれなくなったのか、端末から顔を逸らして俺を見つめた。   「いい加減、俺をベッドで寝かせろよ!」  ドガッ、と音が出るくらいに、ファーストを蹴落としてみた。  何がしたいんだと言うような目で見られているが、気にすることなくベッドに腰掛け「俺の陣地だ!」というのを主張する。 「んだよ、そんなに怒らなくても良いデショ」 「ここは俺の部屋だ。おめぇの部屋じゃねーよ」  ふと、俺の傍に置かれてるファーストの端末が目に入り、手を伸ばして何かゲームでもしてただろうかと思い暗証番号など設定してなかったのか、指で触れたらトップ画面になった。  そのトップ画面に俺が映っているのだが。 「あ! おい、見んなって! 返しやがれ!」  床で寝転がっていたファーストが勢いよく立ち上がり、俺が握っている端末にめがけて腕を伸ばして奪い返そうとしているが、俺はその端末の電源を切り、自分のズボンのポケットに入れ、代わりに俺の端末をファーストに渡した。
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