雨の子

2/2
前へ
/71ページ
次へ
雨が降っている 俺はいつも通り 仕事を終え 誰も待っていない家へ帰る その途中 男の子が泣いているのを見つけた 特に理由はなかったが たった1人で 傘もささずにうずくまる そんな男の子に声をかけた どうしたのか そう聞くと 雨がやまないから 追い出されたんだ しかも今は迷子でどうしたらいいかわからない と答えて泣く 俺はその男の子の手を引いて歩いた 雨の中 公園のブランコに座った ブランコなんて小学生の頃にしか乗っていなかったはずだ 過ぎ去った30年を振り返りそうになってやめた。 男の子は俺に聞いた おじさんはこんな所でどうしたの 俺は 俺も 俺も迷子なんだ 毎日同じ道通って 毎日ゴールになんて近づくことはできない その日から ずっと雨が止まない 男の子は毎日同じところでうずくまって泣いていた 二週間ほど ずっと 男の子と会ってから ちょうど二週間と一日後 久々に雨がやんだ そして 男の子もいなくなった それから一ヶ月経った頃 あれからずっと晴天が続いていたのにまた雨が降った 仕事帰り 公園のブランコに傘をささずに立つ 少し成長したあの男の子がいた おじさん ゴールを抜けたら次のレベルの迷路があったよ でもね 間違った道を何度も通り続けるんじゃなくて ふと脇道にそれたら出口に近づくんだ 僕はもうここで迷うことはない 俺は 男の子のその若々しさとたくましさに感動した いつか俺も この果てしない迷路でゴールを見つける 次の もっと広い迷路で先に進むために
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加